2006-02-04 その橋を渡ると過去の国
_ 越境
暗い橋を渡った翌朝。空はどんよりと曇っていた。
「いらっしゃいませ、{おはようございます|こんにちは|こんばんは}」
通路には大勢の亡者が逆巻き、それを制御する制御呪文が唱えられている。
修行のごとく詠唱を繰り返す人たち。
私はデジャヴを感じ、立ちすくんだ。心がざわめき悪夢がよみがえる。焦燥感と白熱、混迷に満ちた日々の記憶がよみがえる。
私は圧倒的な現実の前に自分を失い、気づけば周りの同じ色の衣を纏いし者たちと同じ呪文を詠唱していた。
ただただひらたすらに。
人は苦痛を感じると機械的に自動的に声を出すという。
まるで痛みのエネルギーを声に変え発散させるかのように。正気を保ち肉体からの神経電気パルスを声に変えるかのごとく。
呪文を唱え始めてからしばらく時間がたち、意識的に呪文が制御できるようになって来る。
私は呪文を唱えずに周囲を冷静に見渡す境地に到達した。
全国から集まったのではないかという異常な数の亡者たちが周りに充満している。
私はその中の一人に声をかける。
「いらっしゃいませ。こちらの新機種は…」
相手はモブから声をかけられて、背景が前景になったことにようやく気づいた様子で、私を凝視した。
「画面がもっと大きいのがいいな」
「それでしたらこちらの東京●線社製のセパレートタイプなどが。今日は吉日ですので少ない消費エナジーであなたの獲物になります」
繰り返される呪文の応酬。相手の言霊にはこちらも呪文で対抗するしかない。声などかけなければ良かった、と一瞬後悔の念が浮かぶ。
気を取り直して呪文を編み上げる。
「今ならこの二重構造全反射光学繊維網を利用した回線に同時加入で30000ポイントの癒しが得られます。これできまりでしょう?」
白く輝く30000のデジタル数字。相手の頭上にその文字がすーっと浮上すし、すぐに消え去る。
これで相手の魂は私のもの。
この歪んだ浄土では相手の魂を得ることでしか私は意識を保持することが出来ない。
相手はお望みの獲物をたやすく得ることが出来ただろうが、やがては魂を私に捧げることになる。
『なんということをしてしまったのだろう』
大脳新皮質に一瞬そのような考えが浮かぶのだが、周囲から聞こえてくる『声』が私の脳に直接作用したのか、数瞬後には理性は失われ何を考えていたのか思い出せない。
私の周りで繰り返し生み出される呪文。獲物の獲得と魂の余韻。
この国で私は一切の希望を捨てひたすら自分を守るために呪文を唱え続ける。
エゴイスティックといわれれば甘んじてその言葉を受けよう。
この場で生存し、意識をかすかにでも保っていくには呪文と魂の応酬を続けるしかないのだ。
賽の河原。
この国ではそのような伝承があったはずだ。今のこの現実と賽の河原との間に本質的な違いなど見出せない。
私の意識は絶望と徒労感で満たされる。
多くの因果を生みながら呪文の詠唱は続く。
「あなたの人生の物語」Ted Chiang。短編集。
「時砂の王」小川 一水。カッティ萌え。
「時をかける少女 限定版」瑞々しい想いと夏の空。
「宇宙のステルヴィア」こんぺいとう。
「宙のまにまに」天文部・青春。メガネ君。
「成恵の世界」10巻絶賛発売中!! 日常がまた良い。
「りんちゃんクッキーのひみつ」元気なりんちゃんと一緒に貴方の心も温まることうけあい!
心に届く時間SF。
美しいビジュアルと切ないストーリーに酔う。
これぞドラマCD。
宇宙、そこは最後のフロンティア… (TNG,VGRがお気に入り。ENTは未見)
「魔女の宅急便」シリーズ。アニメとは展開が違いますが、心温まります。
「口笛小曲集」切なく暖かい。
「馬鹿図鑑」人の振り見て我が振り直そう
「銀河の魚」透き通った宇宙観が素敵。
「モモ」時間を預ける価値がある: 文庫化されました
かなり良い文章ですね(^^<br>言葉遣いと世界観の柔らかさが絶妙です。<br>ぼくも魔法が遣える気がしてきました